三叉神経痛の原因を、一くくりに述べれば精神的・肉体的疲労が97%でしょう。
後の3%は、脳内に発現した腫瘍などが原因です。
ただし、この3%は確かなデーターによるものではなく、私が関わった三叉神経痛の患者さんの中で、腫瘍が原因であった方の割合から推測した数字ですが、多くの三叉神経痛は「やるべきことをやれば」克服が可能であると言えます。
やるべきことをやるとは、治るまで当センターで手当てを継続するということです。
しかし現実には、仕事を持っていれば長期間は困難でしょうが、短期間でも指導を受けることで症状が改善される方は大勢おられますから、指導を受けるメリットは計り知れないものがあると思います。
三叉神経痛を克服するために大切なことは、三叉神経痛の原因を理解することです。
今年に入って私の指導を短期間受けたお二人の状況を説明しながら、原因について考えてみます。
1、身体の歪(ゆがみ)みについて。
お二人の身体を見ると共通しているのが、顔が右側に傾斜しています。
左右肩の高さも右側が下がっています。
男性は更に右肩が前方に捻じれて出ています。
顔面の〇印が三叉神経痛が発現している箇所です。女性は右頬と額で、男性は右額です。
上半身の歪みは、骨盤が歪み、骨盤の歪みが背骨を歪めているからです。
本来骨盤に歪みがなければ、次のカットの様に正中線は真っ直ぐですが、骨盤内「仙腸関節」が歪むと、下のカットの様にバランスをとるために背骨がS字状、或いは逆S字状に歪むために顔が傾くのです。
★仙腸関節が歪でいる証拠。
仙腸関節は骨盤の腸骨と仙骨の間に一対存在する関節です。
役割は、立ち上がる時、歩く時など、左右どちらかの骨盤に重心をのせて動きをつくります。
この重心を乗せているのが仙腸関節で、ふら付かないで動きができるように微妙な調節をする関節です。
この関節が正常であれば、動きは素早く滑らかな動きができるのです。
ところが、仙腸関節は亜脱臼を起こし易いのです。
つまり、関節がズレてズレた側の腸骨が上方に上がってしまいますから、左右の足の長さが違ってしまいます。
お二人の足の長さを見てください。
2人とも左足が短いですね。
骨盤模型の左右腸骨に画板を当てたカットを見ると、左腸骨が上がっているのがよく分かります。
これだけ骨盤が歪んでいることで上半身が歪んでしまったのです。
骨盤の歪みは「腰痛」の主因ですが、お二人とも腰痛の症状があります。
2、身体の柔軟性が欠けている。
次のカットは、大仏座りと前屈です。
柔軟性がないということは、身体全体の「筋肉」が硬いということです。
三叉神経痛の方は特に、肩・首が緊張しています。
当然「顔面」の筋肉も硬いということです。
顔面の筋肉が緊張していると「顎関節」に痛みや、噛み合わせが悪くなります。
お二人とも気になることがあると話されました。
3、疲労を常に感じる。
お二人のお話を伺いました。
女性は42歳、家族で商売をしているので余裕をもって休養する時間がない生活をして来たそうです。
肉体的に休養ができても、精神的には年中商売から離れられない状況だそうです。
平成25年に三叉神経痛を発症して、テグレトールを600mgから800mg服用することもあるそうですが、治まったり悪化を繰り返し、この4月からは起き上がることもままならない生活に陥り、テグレトールの外、精神安定剤・解熱鎮痛剤・潰瘍治療薬・漢方薬も処方されたが、症状は改善されず当センターを探したそうです。
MRIの検査では、脳幹の問題はないと言われたそうです。
男性は60歳、海外の代理店の仕事をしているそうですが、終日パソコンとにらめっこで肉体的にも疲れるが、昨年11月に父親が入院してから看病等で大変になり、今年の1月に他界、更に、親交の深い友人2人急逝して、精神的に落ち込んでしまったそうです。
そして2月に入り、右眼の上から額にかけて「電気ショック」のような強い痛みが終日何回と出るようになり、鍼や整体の他、片頭痛薬・解熱鎮痛消炎薬を内科医に処方してもらったが効果がなく、当センターを探しあてたそうです。
本人は「三叉神経痛」だとインターネットの情報をみて確信しているが、医師に三叉神経痛と診断されると、神経ブロック・手術・放射線などの治療を勧められるので、その前に当センターで治るのであれば、治したいと考えたそうです。
4、三叉神経痛の主因
骨盤内「仙腸関節」の亜脱臼が身体の歪みの主因ですから、この亜脱臼が問題です。
では、亜脱臼はなぜ起こるのでしょう。
原因は、骨盤に付着して身体の様々な動きを司る筋肉群の疲労なのです。
筋肉は、伸びたり縮んだりして身体を動かします。
動かすためには筋肉は、両端がどこかにつかまっていなければなりません。
これが専門用語で「起始・停止」といいますが、骨盤に付着していて、仙腸関節をヅラす筋肉は、背中側の「脊柱起立筋」お腹側では「腸腰筋」、身体の横では「臀筋」です。
脊柱起立筋は、体を伸ばす・捻じる・横に倒す時に主動する強靭な筋肉群です。
腸腰筋は、歩く時に太ももを上げる・前屈するときに主動する強靭な筋肉群です。
臀筋群は、股関節を内側・外側に動かし、歩く時お尻が下がらない様に支えます。
人体の大小さまざまな骨は200余り、関節はその倍存在します。
関節を動かす筋肉も相当な数ですが、筋肉は、肉体的精神的疲労が溜まると「萎縮」する、縮むという性質を持っています。
その萎縮が一定のレベル以上に萎縮すると、強く付着点の骨を引っ張るのです。
骨盤に付着している先ほどの三つの筋肉群は強靭な筋肉ですから、その筋肉が萎縮すると骨盤は不安定な状態に置かれます。
人は利き足、利き手がありますから、疲れがたまりやすい側の筋肉が先に強く萎縮しますから、どちらかの仙腸関節がヅレるということです。
5、仙腸関節がズレることで起きる問題。
①バランスが不安定になるために、骨盤周辺筋肉が頑張ってふら付かない様に支えますから、通常の数倍のエネルギーを使います。
結果、筋肉は疲れて神経・血管を圧迫して腰痛を感じるようになるのです。
②バランスをとるために、仙骨の上に乗っている背骨が曲がり、頭と体の中心線を守ろうとします。
当然、左右肩の平行が失われ、顔も傾斜するから、肩首の筋肉群に負担が及び筋萎縮が進みます。
肩首の筋肉が一定レベルを超えて異常に萎縮すると、その不快な刺激情報が三叉神経節という神経細胞体に伝わり、三叉神経を刺激して痛みがでることも考えられます。
③骨盤の歪みは、脳脊髄液が入っている脊柱管を歪めることで、液の循環に影響が出ます。
その影響が、顔面の後ろに位置して、三叉神経線維を顔面に送り出す頭蓋骨の一つ「蝶形骨」に歪みをおこします。
次のカットが蝶形骨です。
蝶が羽を開いた形をしていますが、この骨は骨盤の仙骨が歪むと、同じように歪むといわれています。
つまり、骨盤の歪みが脳脊髄液の循環に影響して、蝶形骨が歪むことで、この骨を貫く、上眼窩(か)裂を通る眼神経が刺激されると、眼から額に、正円孔を通る上顎神経が刺激されると頬から上顎に、卵円孔を通る下顎神経が刺激されると下の歯ぐき周辺に痛みが発現すると考えられます。
その根拠として、三叉神経痛は「顔を下に向けた時」或いは「首を不用意に動かした時」に発現することが知られています。
つまり、微妙に歪んでいる蝶形骨が、顔の動かし方で微妙に動き、刺激されやすい三叉神経繊維が刺激を受けて痛みが発現すると考えられます。
6、まとめ
精神的肉体的疲労が筋萎縮をひき起こすと、その影響で骨盤が歪み、次第に身体全体に歪みが波及していきます。
歪みは、更に筋肉の緊張を招き、体の柔軟性が失われることから、血液循環、リンパ循環も停滞気味になり「疲労」が蓄積します。
疲労の蓄積は「神経」を鈍麻にさせますから、自分の身体の状態が自分で解からない神経失調症という不健康な状態におちいります。
神経が失調した人に限って、就寝が遅いのです。寝つけないから夜更かしになるのです。
更に睡眠不足で体調は悪化してゆきますから、三叉神経痛も次第に強くなります。
骨盤の歪みと三叉神経痛の関係など、多くの方は考えられないでしょうが、骨盤を正し、身体の緊張を取り、早寝を心がけ、腹8分7分の和食を心がけ、柔軟体操をしてリフレッシュして、病気は疲労が原因と理解出来れば、疲労をとる生活をこころがけていると、三叉神経痛は次第に消失してゆきます。
三叉神経痛の痛みは強く「自殺」を考える人もいます。
それほど辛い病気ではありますが、原因を理解すれば怖いことはありません。
「やることをやる人」には女神が微笑みます。
今回紹介した男性は3日間、女性は5日間の健康指導でしたが、帰られてからメールで連絡がありました。
その内容をそのまま掲載します。
男性
「髙橋健康指導センター 髙橋 様 お世話になります。 今月(4月)5・6・7日と3日間、三叉神経痛の治療のため訪問した近藤です。 その切はお世話になりました。ありがとうございます。 その後の様子をお知らせしたいと思いメールをいたします。
4月5日長野を訪れるまで、そして3日間の治療中も、毎日数回は右前頭部に激 痛の三叉神経痛が起きていました。 3日間の治療が終わり帰宅した夜、それまでの強い痛みとは変わってビリビリす る感じの軽い痛みが数回立て続けに起きました。 そして、それ以来、今日(4月)18日に至るまで、激痛の三叉神経痛は一度も起 きず、 2-3日に一回、忘れた頃にビリビリする軽い痛みが起こる程度です。 先生の指導に従い、身体のストレッチや野菜中心の食事にもなるべく留意して、 生活しています。 長時間座ったままのパソコン作業をやめるため、立ってパソコンをするようにパ ソコン・机の高さを変更しました。
ただ立ってやってると短時間で腰 が痛くなります。 立った姿勢でのパソコン作業は結構腰に負担かなと感じますが、腰が痛くなると作業をやめるので結果作業時間は短くなりまし た。 骨盤・背骨のズレは簡単に治るとは思えないので、がんばって少しずつでもストレッチを続けていきたいと思っています。 以上、ご報告いたします。 また時間を作って長野に行きたいと思っていますので、その時はまたよろしくお願いします」
女性
「先日は、親身になって治療していただいて、ありがとうございました。 帰宅してからも、先生に教えていただいた体操を毎日コツコツとやっています。 相変わらず痛みはありますが、テグレトールは1日3粒におさえられています。 このままテグレトールの量が減ったら嬉しいです。食事にも気を使うようになってきました、体が軽くなった気がしています。 先生の所に行くまでは寝たきりでしたが、火曜日から仕事にも復帰しています、気持ちも軽くなったので、少し痛むぐらいで落ち込む事も無くなりました、ありがとうございます」
三叉神経痛の悩みだけでなく、身体の不調で悩んでいる方はご相談ください。
解決策は必ずあるものです。
躊躇していると機会を逸してしまいます。
手遅れになると良くなるものも難しくなります。
2016年5月
高橋健康指導センター 髙橋 純一